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戦国BASARA
石田三成・徳川家康友情でやや毛利元就寄り(?)

【簡易設定と流れ】

<そう掌の上の小さな死 僕らの時間は止まったまま――>
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眩しい――。

半ば強制的にその光に意識を呼び覚まされる。まだ眠っていたいのにそれすら許してくれないのだろうか。仕方なく薄らと目を開けると最初に視界に映ったのは天井だった。近くにアリスの気配を感じない事を考えるとどうやら別の場所に飛ばされたらしい。ナイトメアを後で殴るかと心に誓う。

此処がワンダーランドであることは視覚的には勿論だが感覚的にも分かる。風の匂いもその空気も何一つとして変わっていない。変わらない故郷の姿に彩俐は苦笑が浮かんだ。またこの場所に足を踏み入れる日が訪れるとは思っていなかった。あの日からもう此処には帰らないと思っていたから。なのにそれが大切なものを追いかけて舞い戻るだなんて皮肉なものだ。


「目が覚めたようだね――お嬢さん」

不意にノック音と共にドアが開いた。そちらに視線を向けると小洒落たシルクハットを被った男がニヒルな笑みを浮かべて佇んでいた。その言葉と物腰は穏やかだというのに言葉は鋭い気がする。帽子屋、ブラッド=デュプレ――嫌な奴に拾われたものだ。

「相も変わらずその胡散臭さは治らないようだね・・・ブラッド=デュプレ」

目覚めて間もない病人を相手に喧嘩を売るなんて本当に嫌な奴だ。言葉を呑み込んでにこりと微笑んで介抱してくれた事への礼を告げる。そして続けてそう言葉を紡いだ。ブラッドの頬が一瞬引き攣ったのを見逃さず内心「ざまあみろ」とほくそ笑む。昔から何かとこの男は突っ掛って来た。あの頃は相手にする事が面倒で無視していたが言われたい放題というのは癪だ。

それと同時にブラッドに罪は無いがアリスを傷付けたあの男を思い出して胸糞が悪い。出来ればこの男とアリスを会わせたくないと思った。早々にアリスを探しに行こうとベッドから起き上がろうとした。が、立ちあがった瞬間に立ち眩みを起こして身体がフラ付いた。世界を越えるというだけの事にこんなにも体力を消耗している事実に苦笑いが浮かぶ。本来ならば再びベッドに逆戻りするところを支えてくれたのはブラッドだった。腰に回された腕のおかげで何とか倒れずに済んだ。

「どーも、迷惑をお掛けして悪いね。もう大丈夫・・・」

大丈夫だから、と、距離を取ろうとした。にも関わらずその腕は一向に離れる事無くむしろ腕の力が強まるばかり。一体何のつもりなのだろうか。いつ屋敷の者が部屋に訪れるとも知れないのにこの距離は無いだろう。カプリスキャットと帽子屋は犬猿の仲だ。久し振りに会ったかと思えばルール違反とは一体何を考えているのだろうか。

「・・・相変わらず同情したくなるほどの貧相な身体だな」

漸く離れたかと思えばこの発言。正直、本調子だったならば銃の一発でもぶっ放していたのは間違いない。女性の身体に触れておいてその発言は紳士らしからぬものだ。そもそもこの男が一度でも紳士だった事なんてあったかどうか怪しいところだが。ほぼ反射的にベッドの枕を投げつけるがそれをまた危なげもなく避けるところが腹立つ。この男は本当に人を苛立たせることに長けている。

「急いでいるんだ・・・君と遊んでいる暇は無い」

アリスを探さなければ。無意識にその名を呟いていたらしい。それを聞き逃さなかったブラッドが「アリス?」と問い返す。出来る事ならばこの名は誰にも教えたくない。無視して帽子屋を去ろうとした彩俐の腕を掴んでブラッドが「答えたまえ」と更に質す。この男は一度興味を示すと返事が来るまで突っ掛るのだから面倒だ。

「君の言う『アリス』とは余所者のお嬢さんの事かな?」 「・・・知ってるの?」

不意に思い当たる節があったのかブラッドがその言葉を紡いだ。真っ直ぐに向けられた漆黒の双眸がブラッドを捉える。そこに強い意志が籠っているのが分かった。よもやあの気紛れ猫がこんな目をするとは。彩俐が言う『アリス』は気紛れ猫に大きな影響を与えたらしい。


Welcome to wonderland 1-1
ハートの国のアリス 
分岐夢――白兎。三月兎。夢魔。

<<あなたをまだ 憶えていたい 世界が果てても――>
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