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side.after

 

「ところで、」
「ツナはどこいったんだ?」
「ああ、一足先に地上に行ってるよ」
「くれぐれも邪魔しないようにな・・・特に隼人」





若きボンゴレ達を見送った後、無意識に走り出していた。その後ろ姿を誰かが呼び止めた気がしたが駆けだした足を止める事無く地上へ走る。最後の最後に告げられた真実に心臓が止まるかと思った。だが同時に言葉に言い表せない程の感情が込み上げたのだ。

綱吉が生きていたと言う真実――。


「・・・・・・」

棺桶の安置されていた場所に着いた。走った所為か息が弾む。それを整えながら棺桶に視線を向けた。まだ眠っているのだろうか。開けられた形跡は無い。棺桶の上に置いてあった過去の綱吉の日記帳に書かれた文字が薄らと消えていく。戦いを経てこれからの未来が変わる象徴だろう。最後に小さく書かれたその文字に驚きのあまり口元を押さえた。


――こんなにも前から自分は想われていたのだ。

否、気付いていた。だけども気付かないフリをずっとしていた。しないわけにはいかなかったから。たとえ態度で示されたとしても目を閉じて見ない。言葉で告げられたとしても耳を塞いで聞かない。受け入れたら最後、きっとその優しさに縋ってしまうことは分かり切っていたから。

嗚呼、本当に昔から自分と言う人間は微塵も変わらない。相手から向けられる感情に甘えて自分の感情をずっと押し殺して来た。今も、過去も――ずっと。その結果、自分はどうしようもない過ちを犯したのだ。本当は此処に来るのが怖かった。今更どんな顔をして会えば良いのかなんて分からなかったから。それでも無意識に駆け出していた。綱吉が生きていると聞いて居ても立ってもいられなかったのだ。


『未だ知らないことがたくさんある。でもこれだけはオレでも分かったんだ』


「沢田綱吉は、逢隈彩俐をあいしてる」

不意に背後から抱すくめられた。そして聞こえてきた聞き慣れ過ぎたその声に小さく肩が揺れた。口を開こうとしたが言葉が出て来ない。否、口を開いたら泣いてしまいそうな気がしたから。自分の胸の前で結ばれたその掌にそっと手を重ねる。重ねた手が微かに震えた。

「おかえり」と、耳元で囁かれたその声に堪え切れず涙が溢れた。ずっと聞きたかった声。ずっと求めていた温もり。もう二度と還らないと思っていたのにそれは今、自分の直ぐ近くに存在する。夢だと思った。否、夢でなければ良いと思った。こんな風にあっさりと受け入れられると思っていなかった。


「・・・綱吉」

震える唇でそっと紡いだのは心から愛しいと想えた相手の名前。それを聞いて綱吉は先程よりも抱きしめる力を強めた。もうどれだけ離れていたか分からない。二人が道を別ったあの日からどれだけ経ったのだろうか。愛したひとをこの手に掛けたあの日からどれだけ。「彩俐」。改めて名を呼ばれてそのまま凭れかかる様に綱吉に身体を預けた。そして声を殺して泣いた。


いつしか還る場所は此処しか考えられなくなっていたんだ―――。
 

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