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side.before

世界が反転して、気付くと視界に広がったのはほんの前に見掛けた光景。十年後に行く為に経由したから、過去に戻るのにもまたそこを経由しなければ帰れないということなのだろう。白蘭の介入によって歪みが生じたもう一つの世界での綱吉の死。身を裂かれる様な想いをしたが、すべてを終えた今、何かが変化している筈。

否、していると願いたかった。


「・・・彩俐?」

最初に彩俐を見つけて名前を呼んだのは隼人だった。その声に呼応してゆっくりと顔を上げた。「ツナは!?」。切羽詰まったような声になった。その勢いに隼人は一瞬目を丸くする。が、久し振りに見た狼狽した姿に口元を緩めた。


「ちょっと騒がしいんだけど・・・」

「かみ殺すよ」と、雲雀の気だるさげな声が響いた。その声の方向に彩俐が振り返る。焦りに駆られて周囲があまり見えていなかったがよく見たら殆どの守護者が集まっている。そして、奥の扉から笑いを噛み殺しながら「その辺にしてあげてくださいよ恭弥さん」と、いつもと変わらない様子で姿を現した人物に目を丸くする。

こちらに視線を向けて穏やかに微笑み「おかえり、彩俐」と、そう言った。喉に言葉が張り付いて出て来ない。そう言った人物は少し前まで死んだと言われていた。この世界に戻ってきて最初に「ただいま」と言いたかったのにそのひとは出迎えてくれなかった。

なのに今、此処にいる――。


「っ」

まるで子供だと我ながら思った。それでも歓喜が勝って躊躇う事無く綱吉に飛び付いた。これではまるっきり14歳の頃と変わらない。それでも自分にとって此処は大切で、掛け替えのない場所なのだ。ずっと焦がれていた。あんな別れ方をした後だから余計に。綱吉に会いたいと願っていた。
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