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第4話。
帽子屋さんとお茶会。

太陽を連想させるのは――黄昏の色。


夜色の瞳と目が合った瞬間、脳裏を何かが掠めた。それが何なのかまでは分からない。ただ、懐かしい。
なぜかとても優しくて、心が温かくなる感覚。同時に言葉に出来ない何かが募る。辛いのか、嬉しいのか。
胸の辺りがムズ痒くなってくる。痛い・・・?嗚呼そうだ、痛いのかも知れない。でも、痛む理由が無いのに。


 


 


「・・・お茶会にお招きいただけたこと光栄に存じ上げます。私(わたくし)、逢隈彩俐と申します」


あらためて、というか、今更なのだけれども。曖昧に微笑みながら慣れない謝辞の言葉を紡いで名乗った。
この場に及んで名乗りもしないのは失礼だ。今の立場を弁えるならもっと以前に名乗るべきだっただろう。


 


が、今回は仕方がない。


だって双子が名乗らせてくれないんだもん。名乗る前に勝手にエスコートしたのは帽子屋さんなんだもん。
と、駄々をこねるのは此処まで。「堅苦しい挨拶はいい」と、速効で敬語モードは帽子屋さんに止められた。


 


「今日は親しい者だけを招いた内々のお茶会でね。何、遠慮する必要は無い」


 


更に続いた言葉にもの凄く突っ込みたいけどこれはおそらく突っ込んだらいけないパターンかも知れない。
親しい者だけを招いたのなら明らかに私がそこにそぐわないこと位は理解できる。何でマジ誘ったんだよ!
言葉にできず悶々とする私を尻目に帽子屋さんは涼しい顔で「ああ、紹介がまだだったな」等と、のたまう。


 


知ってるよ!言葉にされなくとも既に知ってますよーだ!!


と、言葉に出来たらどれだけラクだろう。控え目なフリをするのも楽ではない。というか、既に限界が近い。
化けの皮が剥がれそうなのを必死に取り繕っているわけですハイ。「ブラッド=デュプレだ」と、帽子屋さん。
「それからこっちが・・・」と、視線を追えば三月ウサギ。「エリオット=マーチだ。よろしくな」と、快活に笑う。
帽子屋さんが認めた客だからなのだろう。あっさりと受け入れられた事に拍子抜けすると同時に安堵する。


 


「遅くなってごめんなさい。ブラッド、エリオット」


 


不意に第三の声が響く。振り返るとそこにはアリスと双子の姿。親しい者の中に既にアリスも含むらしい。
アリスは私を見つけると一瞬目を丸くした後、嬉しそうに「久し振りね。彩俐」と、微笑んだ。笑顔で応える。


 


「ん?アリスもりーと知り合いなのか?」


初対面でないのは火を見るより明らかだ。三月ウサギさんは物珍しそうに首を傾げながらアリスに尋ねた。
この流れはあまり宜しく無いかも知れない。ジワリと冷や汗が額に滲むがどうにか笑顔を取り繕い堪える。
「彩俐とは最初の時に時計塔で会ったのよ」と、何気ない一言。ある意味で、幸い。ある意味、最悪だった。


 


「最初の時に、時計塔で・・・か」


愉快そうに笑う帽子屋さんに不快感が込み上がる。わざとらしく区切られた言葉から察するにバレたかも。
三月ウサギさんは時計塔という言葉に眉を顰めるだけで、それがどういう意味を持つかは気付いていない。


 


気付かないで欲しい。


否、時間の問題なのかも知れないけど、気付かないで。この世界の余所者は一人だけで居て欲しいから。
アリス以外の余所者は必要ない。存在したらいけない。だからお願いだから気付かないで欲しいと思った。
「・・・時計塔なんかに居たのか?」と、吐き捨てる様に三月ウサギさんが言った。あ、そっちが気になんの。


 


「一時期、少しお世話になってたんですよ」


 


なんか、という言葉に少しだけイラッとしたのは否定しない。二人の仲を考えれば仕方ないかも知れない。
だけど、時計屋さんは無愛想ながらに部屋で休憩くらいはさせてくれた。まあ後半は放置状態だったけど。
それでも何も分からないまま野に放たれるよりかは余程マシだ。心の準備をする事だってちゃんと出来た。


 


「よりにもよって、またあんな陰気臭ぇ場所を選びやがって・・・」


一時期、とは言ってもやはり気に食わないのか、ブツブツと三月ウサギさんが不満げに何かを呟いている。
また、って何だ。何でまたあんなところに、的な、またなのか。解せぬって様子だが解せないのはこっちだ。


 


「エリオット。さて、人も揃ったところでお茶会を始めるとするか」


このままでは進まないと思ったのだろう。帽子屋さんはやる気の無さそうに三月ウサギさんを呼び咎める。
そして仕切り直す様に手を鳴らすと一瞬でテーブルがセッティングされる。不思議の世界のマジックだね!
生でこれを見たら感動を覚えるのも仕方ないと思うんだ。そして、帽子屋さんに呼ばれてメイドさんが数人。


 


――紅茶の香りを引き連れてやってきた。


キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!


 


あ、やばい。


・・・・・・げふんげふん。思わずテンション間違えちゃったよ。小説上でのタブー犯しちゃった。いかんいかん。
いやでも、それくらい嬉しかったんだって悟って欲しい。だって目の前に普通じゃ絶対飲めない紅茶だよ?
私、今なら時間が止まってくれても良いと切実に思うわけです。いや、すでに狂っているわけなのですが。


 


「・・・彩俐。好きに飲めば良いから、その物欲しげな目は止しなさい」


 


不意に溜息混じりに窘める帽子屋さんの声が聞こえた。そこで我に返った。あまりに喜び過ぎてしまった。
だ、だって久し振りなんだもん。夢にまで見るくらいに恋しくて、でも貧乏生活には高すぎる嗜好品でだね。
それが目の前にあるわけなのだよ。冷静で居られる人が居るなら会ってみたい。もう手がプルプルしてる。


 


おそるおそるカップに紅茶を注いで口を付ける。一瞬にして天にも昇れる素敵な気分になった。嗚呼幸せ!
「君が紅茶好きだったとは意外だな・・・」。一喜一憂しているのが見えていたのか、意外そうな帽子屋さん。
私はずっと紅茶好きだよ。いや、昔はそこまでじゃなかったんだが、今は愛しくて堪らないパートナーです。


 


「りー、砂糖は良いのか?」


 


遠慮がちに三月ウサギさんが砂糖の壺を差し出し尋ねた。あれ?帽子屋さんのお茶会は砂糖厳禁では?
というか、気を利かせて貰って有り難いんだけど「あー・・・私、砂糖入れない派なんです」と、断りを入れる。


 


「!!・・・君もやっと紅茶の魅力を理解してくれたようで嬉しいよ」


私の言葉に帽子屋さんは少しだけ驚いた顔を見せたが、すぐに満足げに笑って自身も紅茶に口を付けた。
甘いのも嫌いじゃないけど胃がもたれるからストレートの方が飲み易いんよね。こればかりは仕方がない。
まあ下手に砂糖とか入れてお茶会最中にマシンガンぶっ放されるよりかはマシだからむしろ良かったけど。


 


「何だか意外ね。彩俐って甘い方がむしろ好きそうなイメージなのに・・・」


茶菓子を手に取りながらアリスが意外そうに呟いた。いや、でも私は割とずっとストレート派なんだけどね。
確かに昔は砂糖を入れていた時期もあるけど甘いのは胃がもたれるし。ストレートもあまり良くはないけど。


 


「紅茶にしても珈琲にしても何も入れない派だよー?胃がもたれるんよね」


胃に対する負荷を考えれば間違いなく何も入れない方が多大な負担が掛かっているとは思う。仕方ない。
というか、それでも懲りずに摂取し続けた結果が今だもんなぁ。立派なカフェイン中毒者だよ・・・・・悔いなし。
だってこんなに美味しい紅茶が飲めるならちょっとくらい中毒になっても良いじゃない!カフェイン最高!!


 


家なき子生活をする上で何が辛いって紅茶が飲めない事が一番辛かった。スタッフさんが紅茶くれたけど。
でもね?ポットもティ○ァールも無いから淹れられないんだよ!あの日は流石に茶葉を前に枕を濡らした。
そこに居るのに触れられないとかどんだけ鬼畜仕様だよ。紅茶中毒者をいじめるのも大概にしてくれよ!!


 


(以下、執筆中)

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