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第三話。
帽子屋敷に配達中。一部未修正。

 




紅茶缶の入ったダンボール箱はそれなりに重い。チリも積もれば何とやら・・・・・この紅茶美味しいのかな?
私も欲しいなぁなんて思ったりしないよ。ほら、だって仕事だし?仕事によこしまな念を交えたりしないって。
でもさでもさ・・・・・・こんだけあったら一個くらい無くなっても分からないかなぁ・・・なんて思ってたりしないよ?

「・・・思ってない思ってない」


仕事に集中しなければ。雑念を振り払うように首を横に振る。最近飲んでいないせいか、結構キてるかも。
茶葉の状態の時ですら紅茶に意識がいってしまうなんて・・・・・ああ、うん。カフェイン依存はよろしくないね。
時計屋さんのところにお邪魔した時に淹れて貰えば良かったと心底後悔してますナウ。紅茶が飲みたい。


あー・・・・・紅茶寄こせぇぇええええ


・・・・・・・・・。


漸く見えはじめた紅茶屋帽子屋屋敷の外観はゲームで見た通りで、お世辞にも趣味が良いとは言い難い。
否、人の家に悪趣味とは失礼だな。個性的。出来れば早く着いて欲しい。そろそろ腕がプルプルしてきた。
流石にこれ以上は無理!なんてほど非力ではないつもりだが、流石に領土を跨いだ運送は疲れるだろう。


帽子屋屋敷の門前に辿り着いた。出来れば双子が居ないことを願ったがどうやら儚い願いだったらしい。
視界の片隅を赤と青が過る。うわ、超逃げたい。今すぐダンボールを置き去りにして安全地帯に行きたい。
しかも、その二色はこちらに近付いて来るではないか。マジでか。ちょっと本当に勘弁して欲しいんだけど。


「やっと来た!」 「待ってたんだよ?」


「「ねー?兄弟」」と、声が揃う。いきなりダンボールの重さが消えて少し驚く。取り上げたのは・・・どっちだ。
青い方もといトゥイードル=ディーの方だった。で、私の手を引いて門番小屋に進むのは赤い方のダムだ。
斧を向けられることは無くて安心したが妙に歓迎モードで接待されて気持ち悪いと思うのは贅沢だろうか。


「えっと・・・?」


このまま門番達に荷物を預けて帰りたいところだが、用件を伺っている以上は帰るわけにいかないだろう。
つまり嫌でも屋敷に向かい、ブラッド=デュプレに対面しなくてはいけないわけだがマジだるい。帰りたい。
っていうか、これ向かってるの屋敷じゃないよね?おーい!ちょっと待って。用件があるのは屋敷なんだよ。
こっちじゃないんだよ。私は屋敷に紅茶の箱を届けないといけないんよ!聞いてる?聞いてないよねー?


「ボスから、りーが来るって聞いて楽しみにしてたんだから」


と、そこいらのテーブルにダンボールを放り置いてディーが口を開いた。おい貴様ちょっとは丁寧に扱えよ。
というか、何で幼少時代の呼称を知っているのか突っ込みたいがそういう雰囲気でも無い。何なんだ一体。


「僕たちずっと、りーのこと待ってたんだよ?」


と、まるで甘える様にそこらの椅子に座らせた私の膝に手を置いて、のんびりとした口調でダムが言った。
べ、別に上目遣いされて可愛いだなんて思ってないんだから!というか、私の存在役持ちにモロバレやん。


「あの、その・・・帽子屋さんに伝票を届けないといけないんですけど・・・・・・」


そんなに紅茶を待ち望んでたなら尚更急いで届けないと。一歩間違えたらこっちが危ない可能性がある。
紅茶を待ち侘びる紅茶好きは手負いの獣のように危険なのだから。それは私自身が一番よく理解してる。
しかし、だ。このクソガ・・・双子はまるで私の話を無視して勝手にじゃれてくる。ああウゼ・・・急いでるのに。


小動物がじゃれてくるような可愛い構図ではあるが、如何せん見た目は子供で中身は悪魔の双子である。
そんな二人に挟まれていることもあり戦々恐々だ。なるべく刺激しないように早く部屋を出たいと申し出る。
が、このガキ・・・双子さん達まるで聞いてくれません。ねえ、お願いだからお姉さんを早く戻らせてください。


今はあのダンボールハウスが堪らなく愛しい・・・・。


「大丈夫だよ!」 「そんなんじゃボスは怒らないって!」


**以下、未修正***


「大丈夫だよ!」 「そんなんじゃボスは怒らないって!」


両サイドから似た声が口々に言う。・・・・発狂したくなった。というか、そろそろ鬱陶しいと思っても仕方ないと思う。作り笑いが引き攣りそうになった瞬間、双子の背後に人影が見えた。次いで、「わっ!何するのさボス!」、「酷いよ!」という双子の反論の声。


「何をやっているんだお前達」


胡散臭い声に彼が帽子屋だと分かった。我慢できなくなって門前まで迎えに来たのか、本当に紅茶狂いだなこの人。双子の頭を鷲掴んでいる帽子屋さんに小さく会釈する。


「えっと・・・お届け物はあちらです」


と、遠慮がちにダンボールを指差した。見ていて御理解頂けるだろうが、私が悪いわけじゃない。断じて悪いのは私じゃない。私は真っ当に仕事をこなそうとしていたのを双子に阻まれただけだ。


向けられた視線に私のチキンハートは小さく肩を揺らし、そして、思い出したように仕事を完遂しようと伝票を差し出す。納品書だ。とは言え、まだ全部を届けたわけじゃないから気が早いと言われそうだが、ダンボール箱の中身があやしいものではないと証明するには一番だと思う。が、次の瞬間、仕事用に渡されたとある機械オタクが作った『ポ●ベル』が鳴り響く。一言、断ってからポ●ベルに目を向けるとスタッフさんからだった。


『残りの紅茶 女王陛下が買っちゃった 謝っておいて ごめんね ☆』


・・・・・xね。


豆腐の角で頭をぶつけてxんでしまえと不謹慎にも本気で思ってしまった。馬鹿だろ。嫌な予感はしてたけど本当に馬鹿だろう。そしてその用件をどうして今、私に送り付けたんだこの腐れxx!給料上がる前に私の命が召し上げられそうだわ馬鹿!!


「どうかしたか?」


苛立ちが顔に出ていたらしい。単なる好奇心なのだろう帽子屋さんが訪ねて来て慌てて営業スマイルを取り繕う。言えない。このタイミングでは流石に言えない。「納品できるのこれだけになっちゃいましたー」なんて言えるわけがない。


「いや、えっと、その・・・・・すみません、これだけです」


「は?」と、真顔で言われて思わず「すみません」と、再度謝る。いや、私全く悪くないんだけどね。悪いのは押しに負けて女王陛下に流しちゃったスタッフさんなんだけどね。たぶん、そんなことはこの人に関係ないだろう。


「・・・すまない、もう一度聞いてもいいかな?今、何と言った?」


本当に聞こえなかっただけなのか、それとも現実を受け入れたくないだけなのか。できれば前者であって欲しいのだがおそらくそれは希望的観測に過ぎなくて本当は「こいつ何言ってんの?納品できるのひと箱だけ?はぁ?」みたいな感じなんだろうなと思うと私もうアレが縮み上がりそうなくらい怖くて怖くて、まあ付いてないけど。


「申し訳ありません。こちらの手違いで納品できるのがこの一箱だけになってしまったんです」


悪いとは思う。楽しみにしてた紅茶が手に入らないと知ったら狂乱ものだよね。八つ当たりだってしたくなるくらいに腹立たしいもんね。その気持ちはよぉく分かる。でも不可抗力だ。スタッフさんも首を刎ねられたくなくて必死だったのだと思う。


その代わり、現在進行形で私の命が危険に晒されてるけどな!本当に給料上げてくれなかったら怒るよスタッフさん!いくら仕事とはいえ危険が伴うのならそれ相応の給料をもらえなければ割に合わない。っていうか、本当に帰っていいかな。無言が怖いんだけど。私悪くないよ!全く悪くないからね!!


「ところでお嬢さん。納品不可ということはこの後、時間に余裕があるんだろう?」


「ちょうどいい、お茶会に参加していきなさい」と、死刑宣告。というのは冗談にして、明らかに拒否出来る状況じゃないよねコレ。というか、言い方は柔らかいのに「参加していきなさい」だからね!どう考えても拒否権無いからね!


「・・・・・では、御言葉に甘えて」


とは言え、お茶会という甘い誘惑を拒める強い心なんて今の私にはある筈も無いのですチャンチャン。だって、紅茶だよ?目の前に夢にまで見た紅茶があるんだよ?しかも帽子屋 ブラッド=デュプレの保持するものといえば一級品ばかり。飲んでみたいって思うのは至極当然のことだと思うんだ。私は真っ当な思考の持ち主だよ!


ブラッド=デュプレはその返事に満足げに笑うと何をトチ狂ったのか人の腰に手を回してエスコートしはじめた。これセクハラじゃないですか?ねえ、セクハラにはならないんですか?ええ、そうですか。イケメンって本当にお得ですね。とは言え、私も拒まないから相子か。だってそこに紅茶があるんだから少しくらい我慢するよ。紅茶紅茶!

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