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※裏要素注意※



―― 「今から俺はJabBerWoCkyの犬だ」。


その言葉を聞き正気じゃないと思った。自分が人ではなく犬と言われたのに怒りもしないなんておかしい。
それを受け入れて自ら口にするだなんて、皮肉でないなら本物の馬鹿だろう。可能性はどちらもあり得る。


そして今ならはっきりと断言出来る。


(――・・・・・間違いなく馬鹿だ)


いや、変質者か


「おっと。歯は立てないでくれよ?」


それから「ちゃんと集中してくれないと」。と、何一つとして悪びることなく彩俐を見下ろしながらそう言った。
口に銜えたものが邪魔で反論することも儘ならない。悔し紛れに睨み付けるとエースは「あはは」と、笑う。


――この変質者が。


いつもの事ながらあまりに勝手な言い分だった。先刻は彩俐だけが気持ち良い思いをしたから今度は、と。
場所を弁える事なく会合を終えた会議室で『続き』を要求してきたのだ。断ったにも関わらず拒否権は無い。
結局折れてしまったのも悪かったのかも知れないが断ればもっとえげつない可能性が無きにしも非ずだ。


「好きな子に酷いことなんてしないよ」


と、白々しい上に胡散臭い爽やかな笑顔でそう言ったエースに頭痛を覚えてしまったのは言うまでも無い。
彩俐の髪に指を絡めて後頭部を押さえる男に何を言われても信憑性なんてまるっきり感じられないだろう。


「・・・・・十分してるやろ」


漸く解放されると同時に透明の糸がそれと口を繋ぐ。うんざりしたような表情で彩俐は一言そう吐き捨てた。
これが酷いことではないというなら他に何があると言うんだ。「聞きたい?」。悪びれも無くエースが答える。
「いらない」。ハートの騎士の口から飛び出すだろう酷いことは聞きたいとは思わない。本気でえぐそうだ。


「そう?なら集中してくれよ」


「さっきから上の空でまったく集中できてないぜ?」と、のたまう。集中してやるほどの事でも無いだろうが。
言いたいのをグッと堪えて薄らと先端に滲んだ雫にそっと舌を這わせる。「・・・」。苦い。思わず眉を顰めた。
にも関わらずエースは気にした様子も無く「ほら」と、続きを促す様に後頭部を押す。くたばれば良いのに。


本気で少しだけ思った。が、仕方なくそれに従ってもう一度それを銜え直す。明らかに容量が大きくきつい。
丹念にそれを舐め上げると、少しだけエースから余裕が消える。着崩れて露出した肩を少し強く掴まれる。
肩を掴む手が肌の上を滑り下がる。やってる事はどう考えても変態な筈なのにそう思えないなんて詐欺だ。
苛められている側なのに、傍目から見れば悪いのは自分で責められる側なんて理不尽極まりないと思う。


「・・・また余所見?」


「いい加減にして欲しいぜ」と、やれやれとばかりにエースが言う。その言葉そっくりそのままお返ししたい。
が、反論の前に、胸の先端の敏感な箇所を弄ぶ手に僅かに声が漏れる。「手が止まってるぜ?」と、一言。
耳元で囁く吐息交じりの声に背を甘い痺れが伝う。それを誤魔化す様に渋々と手を動かし作業を続ける。


・・・・・それが意地だと言われたら否定はしない。


ここで反応したら相手の思うつぼだと分かっている。それが癪で、だから、その感覚をどうにかやり過ごす。
僅かに視線をエースに向けるとテーブルに腰掛けたエースの背が僅かに反る。笑ってしまいそうになった。
余裕があるとは思ってなかったが、そんな姿を目の当たりをにすると少しだけ可愛く思えるから不思議だ。


煽るようにきつく吸えば微かに吐息が混じる。なまじ容姿が整っているだけに艶めかしい痴態に惹かれる。
普段は好き勝手している相手を翻弄出来るのは悪くない。日頃の報復もかねて堪能させて貰う事にしよう。
壊れ物を扱うようにそっと手に取り唇を滑らせる。質量が増して熱を孕んだせいで口に含むのも苦労する。
だが触れるだけで更に増す熱にほんの少し気分が高揚する。そうさせたのは自分だ。くだらない充足感。


「・・・・・」


ネクタイを解きシャツの前を寛がせて密かに熱情を逃がそうとしていたエースと不意に目が合う。赤い頬。
立場が逆転したせいか、自然と彩俐の口元に笑みが浮かんだ。濡れた漆黒の双眸が挑発的に見据える。


――元・ハートの騎士 エース。


時計屋の部下。狂った人形。そんな彼を更に狂わせているのは自分だ。彩俐の手に弄ばれて悶えている。
その事実がこんなにも快感を齎すと思うまい。彩俐もそんな風に感じるとはまるで思っていなかったのに。
先走る雫をミルクを舐める様に舌先で掬う。決して美味とは言い難い味だが今は不思議と不快ではない。


焦らす様に緩い刺激を与え続ける。何度も先端に滲むそれを視覚で楽しみそして最低限の刺激を与える。
時折堪え切れずに漏れる吐息交じりの声に僅かに身体が疼く。焦らしているのは相手なのか自分なのか。
ポケットを漁ると会合中に食べていた飴の包みを見つけた。「エース」。僅かにこちらに向いた紅色の双眸。
ビニールの包装紙越しに彩俐はそっと唇を重ねた。流石に直接的に触れるのは気の毒だと思ったからだ。


「っ・・・口でシてよ」


「もう終わるから」と、余裕の無い笑みでエースが言う。か、否かの境に微塵の加減も無く引き寄せられる。
ほんの少し前まで虚を付かれた様に驚いた顔をしていた癖。途端に強引になるのだから何とも面倒臭い。


(・・・・・自分勝手な男)


溜息


とは言え、結局それに応える辺り自分も相当甘いのかも知れない。彩俐は呆れつつもそれを口に銜える。
ペースを崩されない事が不幸中の幸いだと思った。嬲るように口内で弄べばまた上から吐息が聞こえた。
流石に羞恥心とやらは持ち合わせているらしい。声を殺そうとしてみるが、殺し切れるものでも無いらしい。


羞恥心さえもかなぐり捨てたのか、頭を押さえ付けこちらのペースも完全無視して勝手に動かそうとする。
いきなり崩されたらこちらも苦しい。ただでさえいっぱいいっぱいなのに自由に動けるスペースなんて無い。
だがそんなことはお構いなくエースは快楽を得る方を選んだらしい。本当にこのままくたばればいいのに。
遠慮なしに突っ込んできて容赦なく喉を圧迫するものだから息が上手く出来なくて苦しい。頭が朦朧とする。


「・・・・・」


圧迫感が突然消える。口に含んでいた異物も消えたかと思えば次の瞬間、熱い何かが顔面に掛かった。
何が起こったかと理解する前に頬をドロリとした何かが肌を伝う。呆然としたまま目の前の男を見上げた。


「あらら・・・すごい事になっちゃったな」


「ごめんごめん」と、絶対に悪びれて無い笑顔と共にエースが清々しい顔でそう言った。ホントくたばれよ。
素肌を伝うそれを指先で掬えば白濁色の液体。もちろんそれが何なのかは流石に彩俐とて分かっている。
ぼんやりと指先を眺めてからもう一度エースに視線を向けた。「・・・あんたな」。その声はどこか渇いていた。


「最悪。最低。変質者」


そして容赦なく吐き捨てる。最悪だ。気持ち悪い。部屋に戻り顔を洗おうと思い立ち、服を整えようとする。
が、その手を掴まれ引き留められた。「彩俐・・・待ってくれよ」と、呼び止めるエースの手が胸元に伸びた。


まだ物足らないというのか。


その手を払い落して「嫌。気持ち悪いから部屋もどる」と、冷たく吐き捨てる。胃がムカムカして仕方がない。
「ごめんってば」と、懐から懐紙を取り出してご機嫌取りのように彩俐の顔を拭おうとするが、それを避けた。
「用意するならせめてハンカチにしてくれへん?」。一刀両断。懐紙で拭かれても痛いばっかりじゃないか。


「だって汚いじゃないか」


驚いた様に「えぇ!?」と、声をあげたかと思えば言うに事欠いてこの一言だ。原因はお前だと言いたい。
「その汚いものをぶっ掛けられた人の気にもなってくれません?」。笑顔が引き攣る。ホント何なのこいつ。
「それはそれ、これはこれだろ?」と、やはりエースは悪びれない。腰に回された手が不穏な動きを始める。


「・・・・・だからモテへんのとちゃうの」


その手を払い落しそう吐き捨てた。いい加減に部屋に戻らせて欲しい。いつまでも精液塗れなんて御免だ。
「本命にモテなければ意味無いよ」と、さも当然のように答えるエースは諦めない。不意に引き寄せられる。


「・・・続きする?」


「彩俐だってイっときたいだろ」と、最低な事を囁いて来た。吐息交じりに耳元でそう囁かれてぞくりとした。
消してしまおうとしていた熱情が再び燻りはじめる。払いのけることが簡単なその手が払い除けられない。
分かっていてそうするのだからやはりエースは性質が悪い。それをやり過ごそうと彩俐は固く目を閉ざした。


そして――


 


「ったく、こんなところに忘れてたなんてな」


唐突にドアが開け放たれ、場にそぐわない声が響く。聞き慣れた声に彩俐は思わず息をするのも忘れた。
「あ~かったりぃ」と、気だるさそうな声と共に視界に映ったのは黄昏色の毛をした二本のうさぎ耳だった。


「やあ!エリオット」


「忘れ物?」と、相変わらず爽やかに片手を上げてそう告げる。エースの影に隠れて彩俐の姿は見えない。
そんなエースを視認してエリオットは「ん?アンタこんなとこで何やってんだ?」と不思議そうに首を傾げる。
確かに会合を終えた会議室に残る者なんて珍しい事で、残っているのが騎士としたら疑問にも思うだろう。


気配を殺したのは本当に咄嗟の行動だった。野生の勘が働く三月うさぎ相手に無駄とは分かっていても。
それに気付いたのかエースは小さく笑って不意に彩俐の腰を引き寄せた。「・・・!」。力で勝てる筈がない。
影に隠れていた彩俐の姿がエリオットの眼前に晒される。その姿を視界に捉えてエリオットは目を丸くした。


「は・・・・・?」


口から零れたのはそんな声だけ。目の前で気まずそうに視線を逸らすのは友人の姿。それ自体は普通だ。
が、問題はその格好だった。明らかに乱れた服。その一部に散った白い液体。そして僅かに蒸気した頬。
何よりどうして彩俐がエースに腰を抱かれているのか、そして、エースもまた僅かに着崩れているのだろう。


 

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